2017年4月1日付けで特定研究員として着任しました、高松尚宏です。

■経歴

2006年3月 福島県立安積高等学校卒業
2007年4月 慶應義塾大学理工学部入学
2011年3月 慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科卒業
卒業論文「マイクロチャネル流非侵襲ラマン散乱イメージング・センシング法の開発」
2011年4月 慶應義塾大学大学院総合デザイン工学専攻(前期博士課程)入学
2013年3月 慶應義塾大学大学院総合デザイン工学専攻(前期博士課程)修了
修士論文「連続時不変分数階システムを対象としたKreisselmeier型適応観測器を用いた制御系設計法」
2013年4月 慶應義塾大学大学院総合デザイン工学専攻(後期博士課程)入学
2017年3月 慶應義塾大学大学院総合デザイン工学専攻(後期博士課程)修了
博士論文「分数会微積分を有する非線形制御系と適応制御系の設計」

■学生時代の研究について

学部4年では,佐藤洋平教授の指導の下,顕微ラマン分光法を用いてマイクロチャネル内の多種イオン濃度を同時計測する方法について研究を行いました.

物体にレーザー光を照射すると,物体を構成する分子の振動に起因し,照射したレーザー光からズレた波長の散乱光(ラマン散乱)が現れます.この散乱光を調べることで,物体の分子の状態について計測が可能となります.このようにしてレーザー顕微鏡を用いてラマン散乱光を調べる手法は『顕微ラマン分光法』と呼ばれており,私は,卒業研究において,この手法をマイクロ流体内に存在する多種のイオン濃度の計測に用いる実験を行いました.

大学院では,大森浩充教授の指導の下,分数階微積分を制御工学に応用する研究に従事するとともに,EMS(Energy Management System)領域のJST-CRESTの委託研究において,時系列解析の一種であるサンプルエントロピー解析を用いた気象データ解析や送電システムを対象とした蔵本モデルに基づく同期理論の検証に関する研究も行っていました.また,短期間ではありましたが,JST-SIPの委託研究において,ディーゼルエンジンにSAC(Simple Adaptive Control)やILC(Iterative Learning Control)などのポストモダン制御を応用する研究プロジェクトにも参加していました.

分数階微積分とは,従来の微積分の階数を整数から実数へと一般化した演算であり,Lipnizの時代から存在する古くて新しい微積分の概念といえます.通常の微積分では1階や2階といった整数の階数でしか計算を行えませんが,分数階微積分を用いることで1/2階や√2階といった実数階の微積分の計算が可能となります.このような実数階の微積分を導入すると,自然界の一見すると複雑な仕組みがシンプルな形で表現されたり,従来のものとは異なる新たなアルゴリズムの設計を行えるなどの利点があるため,現在も,分数階微積分を応用した研究が様々な領域で行われています.修士と博士の学位論文において,私は,分数階微積分によって一般化された適応制御系と非線形制御系の設計法をテーマとして研究を行ってきました.

また,学位論文と並行して取り組んだ時系列解析や同期理論に関する研究もテーマとして興味深いものが多く,大学院時代,幅広く様々な分野を経験することができたことは,いい経験になったと思います.

■東海大学での研究について

東海大学では,情報技術センター所属の特定研究員(JST-CREST)として,『地球科学と電力システムの分野横断研究』という研究項目を担当し,地球科学情報データの電力システムへの積極的な応用を行っていきます.

本研究項目において,既存の電力システムへ地球科学情報データを応用することに限らず,地球科学情報データの面から電力システムの解析や制御システムの設計に関する検討を行うなど,双方向的なアプローチによる融合研究を行うことで,電力システムにとっての地球科学情報データの可用性向上と新たな価値の創出を目指します.

中島研究室 – Nakajima Laboratory – "Dialogue with Blue Planet"
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